Caruso

カルーソ

(L.Dalla)

 

 海は輝き、風が強く吹きつけるソレント湾に面した古いテラスの上。カルーソは涙を流した後で若い娘を抱きしめ、歌い始める。海にきらめく光にアメリカでの夜を思い、音楽は胸ををしめつけ、月を見ると死すら愛しく思えるのだった。娘の目を見ると、一粒の涙がこぼれ落ちた。オペラの中では全て作り事。でも彼を見つめる目はこんなにも間近で真実だから、思わず思いも乱れる。アメリカでの夜も、全てが小さくなって行く。彼は振り返り、航跡のような人生を見つめる。そして今や終わり行く人生には思いもはせず、もはや幸せな気分で再び歌い始めた。「お前が大好きだ。とても、とても好きなんだ…今や体内の沸き立つ血を解き放つほどの、かたい絆なんだ

 死を目前にした世界的大歌手、エンリコ・カルーソの愛と追憶と死への思いを、ナポリの港の夜景を背景にドラマチックに描き出しています。